quatre septembre

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So it goes.

ずっとずっと、それはもう10年以上ずっと読もうと思っていた
カート・ヴォネガット・ジュニアの本を初めて読みました。
多分最初に読もうと思ったのは高校生のとき。
それからずっと念頭にはあったのだけれど、機会を逸していたところ
去年ジョン・アーヴィングの、「ガープの世界」を読んだときに
ヴォネガットが、ジョン・アーヴィングの先生だということを知り
やっとふんぎりがつきました。

やっぱり最高傑作だと評判の高い「スローターハウス5」から。

わたしはこれを読んで、初めてSFの定義がなんだか分かった気がします。
ScienceFictionとか、Scientifictionの略だろう、とかそんなことではない!
もちろんSpaceも関係ない!
藤子不二雄の片割れのどちらかが言っていたように、「Sukoshi Fushigi」の
略で決まりだ。もう絶対これだ。
(とは書いたけれど、ではこの本のどこがSFなのかは、まだかけなーい。別項で。)

この本は、第二次世界大戦中に実際にあったドレスデン爆撃がメインテーマな
わけで、ヴォネガット自身がこのときドレスデンにいたことから自伝的な部分も
持ち合わせているし、実際最初の章は、まるで前書きのようにこの本を書こうとする
ヴォネガット自身について書かれている。それでもやっぱりこれはSFであるんだろうなあ
と思いました。正直なところ、最初はすごく読みにくかった。
だって主人公は時間と空間を自由に移動できる人なんだもの。(そしてこういう人が出てくる
から、そしてこの主人公がトラルファマドール星人とかいう人にとっつかまったり
トラルファマドール星で飼育されたりするからSFなわけでは、決してない)

実際のドレスデン爆撃の部分は本当に後半も後半最後にしか出てこない。
ドレスデンが月面のようになってしまった描写は出てくるけれど、
決して涙を誘う演出がされているわけでもない。何度も何度も出てくる「そんなものだ。」と
いう言葉で淡々と書かれている。

でも、何故か最後に読み終わって、解説の部分を読み始めたら涙が出てきちゃった。
本を読んでいるときに泣いたことは何度もあったけれど、読んでる最中は泣けなくて
読み終わったら突然泣けたのははじめてかも。この世界から抜け出すことを体が
拒否するみたいに涙が出てきました。ちょっと待て、解説を読むにはまだ早い、という感じ。
最初読みにくかった、ビリー・ピルグリムのタイムワープも、読んでいるうちに
独特なリズムが出てきて、いつまでもこのワープを繰り返していたいような気分になった。

昔、ガープの世界を読んだときに、「○○○噛み切り事件」のところを、
こんな酷いことは現実でしか滅多にお目にかかれない、と思ったけれど、
このドレスデン爆撃は現実世界そのもの出来事で、やはりフィクションを超える
リアリティがそこにある。全然悲惨な描写はされていないし、ステレオタイプな悪いドイツ人も
出てこない。ここに出てくるドイツ兵はロシア戦線で痛めつけられた老人か、少年兵、
軍人であっても捕虜のイギリス兵を尊敬していたりする。こういう人たちもいたかも
しれないんだな。大量虐殺をしたドイツ人もいればこういうドイツ人もいるし。
ドレスデン爆撃を生き抜いたのに、ティーポットを盗んだせいで銃殺される人もいる。
ああ、人間って「そんなものだ」って本当に思ったよ。

面白さで言ったら、去年読んだハイペリオンやジェーン・オースティンのほうが勝るかも
しれないけれど、わたしの知らない、知りえない世界において本当に起こった(かもしれない)
出来事を教えてくれたこの本はとても大切なものになりました。
わたしはリアリティのあるものがすき。

この本が教えてくれたリアリティは、人間ってこんなものだ、ということです。
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by app_engineer | 2006-02-10 17:54 | 読んだ本
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日記というより週記


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